極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
安藤の自宅マンションへ向かう車中ではずっと沈黙が広がり、吾郎は、何か話を、と思案する。
「えっと、マンション完売して良かったね。異例の早さで売り切れたんだってね」
「あ、はい」
小さく答えると、安藤はまたうつむいて黙り込む。
「どうかした?嬉しくないの?」
「いえ、無事に完売したのは本当に嬉しいです。私も商談をいくつかこなして自信がつきましたし」
「それなら、何か心配なことでもあるの?」
「いえ、そういう訳ではないのですが、ただ…」
言い淀む安藤を、吾郎は「ただ、何?」と促す。
「はい。私、マンションの売り出し期間中はずっと気を張っていたんです。がんばらなきゃ!って、今思えば、かなり無理していたと思います。無事に完売出来てホッとして、ようやく肩の荷が下りたと思ったら、急に涙が出てきたんです。ああ、もうがんばらなくてもいいんだって安心して、気が緩んで…。マンションの部屋で一人、涙が止まりませんでした。だけど、このあともまだ仕事は続くんですよね。次もまたお客様に何千万ものマンションを買っていただく商談をしなきゃいけない。そう思うとプレッシャーで。だから今日、トオルちゃんに会えて本当に嬉しかったんです。言葉はなくても、トオルちゃんを抱いているだけで心が救われて。すみません、トオルちゃんは、都筑さんのところの子なのに」
「いや、いいんだ。またいつでも会いに来てくれて構わないから」
「ありがとうございます」
安藤は無理に笑顔を作って吾郎に礼を言う。
その姿に、吾郎は胸が締め付けられた。
「えっと、マンション完売して良かったね。異例の早さで売り切れたんだってね」
「あ、はい」
小さく答えると、安藤はまたうつむいて黙り込む。
「どうかした?嬉しくないの?」
「いえ、無事に完売したのは本当に嬉しいです。私も商談をいくつかこなして自信がつきましたし」
「それなら、何か心配なことでもあるの?」
「いえ、そういう訳ではないのですが、ただ…」
言い淀む安藤を、吾郎は「ただ、何?」と促す。
「はい。私、マンションの売り出し期間中はずっと気を張っていたんです。がんばらなきゃ!って、今思えば、かなり無理していたと思います。無事に完売出来てホッとして、ようやく肩の荷が下りたと思ったら、急に涙が出てきたんです。ああ、もうがんばらなくてもいいんだって安心して、気が緩んで…。マンションの部屋で一人、涙が止まりませんでした。だけど、このあともまだ仕事は続くんですよね。次もまたお客様に何千万ものマンションを買っていただく商談をしなきゃいけない。そう思うとプレッシャーで。だから今日、トオルちゃんに会えて本当に嬉しかったんです。言葉はなくても、トオルちゃんを抱いているだけで心が救われて。すみません、トオルちゃんは、都筑さんのところの子なのに」
「いや、いいんだ。またいつでも会いに来てくれて構わないから」
「ありがとうございます」
安藤は無理に笑顔を作って吾郎に礼を言う。
その姿に、吾郎は胸が締め付けられた。