いつかまた一緒に
……ダメ金だった。さっき感じた幸せな気持ちが一瞬にして崩れていく。僕たちは落胆して、女子部員の鼻を啜る音まで聞こえてくる。

これで終わり。引退。

それが受け入れられなくて、僕は会場の外へと出ることにした。



会場の外にはほとんど人はまだいなかった。僕は数時間前に吹いていたトランペットを手に、歩く。最後になってしまうのなら、思い切り吹きたかった。僕が三年間頑張ってきたことだから。

ベンチを見つけた。そこに座って吹こうと思った。その時、誰かが泣いている声が聞こえてきた。声のする方に行くと、茂みに隠れて女の子が泣いている。ブラウンの制服が見えた。音浜中学校のものだ。

「大丈夫?」

声をかけていた。茂みがガサッと音を立てて、女の子が出てくる。僕がぶつかった女の子だった。真っ赤になった目からは涙が溢れている。彼女の手にはユーフォニアムが握られていた。

「あなた、夏目中学校の……」

「滝本律です。同じ三年生。えっとーーー」

「宍戸音羽(ししどおとは)」

「宍戸さん。今日はお互い残念だったね」
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