いつかまた一緒に
こういう時、何て言えばいいんだろう。宍戸さんはユーフォニアムを握り締めながら泣いている。ユーフォニアムが担当楽器なんだ。

「頑張ってきたのに……」

鼻を啜りながら宍戸さんが呟く。コンクールで金賞を取るのは簡単じゃない。きっとたくさん練習したんだろう。部長なら尚更……。

僕はトランペットを口にし、吹き始めた。大きな音が鳴り響く。宍戸さんが驚いたようにこっちを見た。そのまま僕は今日吹いた曲を演奏する。

トランペットの力強く、明るいどこまでも響くような音は、恋の甘酸っぱさや楽しさを表すもの。そう顧問の先生が言っていた。それを思い出しながら、吹いていく。

宍戸さんの目から流れる涙が止まった。彼女は少し笑いながら演奏を聴いてくれている。その瞳に、その表情に、僕の心臓が大きく音を立てた。これはただ演奏が楽しいだけじゃない。別の感情が隠れている。

拭き終わった後、僕が大きく息を吐くと宍戸さんは大きな拍手をしてくれた。コンクールで演奏をし終わった時よりも、何故かその拍手が嬉しい。
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