いつかまた一緒に
トランペットとユーフォニアムの音が響く。力強く、周りを鼓舞するような音。楽しい。心臓が苦しい。この演奏が最後だなんて思いたくない。寂しいな……。

色んなことが頭の中に浮かぶ。一年生の頃、先輩たちが演奏している姿を見て吹奏楽部に入ることを決めたことや、楽器なんてしたことがないからトランペットをきちんと演奏できるようになるまで時間がかかったこと。楽しいことばかりじゃなかったけど、楽しかった。

太陽の光が金色のトランペットに反射する。眩しい。でも綺麗だ。さっきは作り物のスポットライトを浴びて演奏していた。でも今は自然の光のスポットライトを浴びて演奏している。

長いはずの一曲が、演奏しているとあっという間に感じる。僕たちは演奏を終えた後、それぞれの持っている楽器を撫でた。……これが本当に最後ーーー最後?

「宍戸さん、僕たちまだ演奏できるよ!」

部活の引退のことばかり頭に浮かんでいて、すっかり忘れていた。大きな声を出した僕に、宍戸さんは「えっ?」と首を傾げる。
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