彼の愛に、堕ちて、溺れて。〜再会した幼馴染みの愛は、深くて重い〜
「何だよ、下着付けてねぇとか、初めからこういう事を期待してたんじゃねぇの?」
「違っ……」
「そうか? 身体は正直だけどな?」

 反論する実杏に構わず俺はそのまま胸の頂に触れ、指で刺激する。

「……ッや、……めて、……」
「本当に止めていいのか? 身体は続けたがってるみてぇだけど」
「そ、んなこと……ないっ」

 止めてと言われて素直に従う義理は無いけど、だからと言って嫌がる相手を無理矢理襲うとか、そういう趣味も無い。

 だけど何つーか実杏だけは違くて、もう少しこのまま続けたくなる。

「それじゃあ、嫌なら抵抗しろよ? ほら、今ならここから逃げられるぜ?」

 俺は掴んでいた手を離し、弄っていた胸からも手を離す。

 あまりに嫌がるから、上に跨っているだけの俺を押し退けてここから逃げ出す事が容易い状況を作ってやった。

 俺は試したんだ、実杏が本当に嫌なのかどうかを。

「ほら、どうした? 嫌なんだろ?」

 けど何故か、実杏は動こうとしない。

 一分待っても、二分待っても、動く事も逃げ出す事もしない実杏のその行動はつまり、先程までの行為が嫌じゃなかった事を示している。

 俺は、そう解釈した。

「――そうか。分かった」
「……っえ!?」

 そう言って立ち上がった俺はソファーの上に寝かせていた実杏の身体を軽々と抱き上げる。

「きゃっ、な、なに!?」

 突然抱き上げられた事に驚いた実杏は俺の首に手を回してぎゅっとしがみついてきた。

 本当に、警戒心が無い。それは、相手が俺だからなのか? 幼馴染みで年下の俺だから?

「翅……くん? あの……どこに?」

 その問い掛けに答えること無く俺は自室のドアを開けると一目散にベッドへ向かい、

「きゃっ」

 少し乱暴に実杏の身体をベッドの上に放した。

「俺はチャンスをやった。お前に逃げるチャンスを。けど、それをしなかった。これはもう――同意した事になるよな?」

 そんな俺の言葉に実杏は視線を外しながら、答える代わりにコクリと首を縦に振った。
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