彼の愛に、堕ちて、溺れて。〜再会した幼馴染みの愛は、深くて重い〜
 あれから何度、身体を重ね合わせたのだろうか。

「…………ん、……?」

 気付いた時には私は翅くんのベッドに寝かされていて、肝心の彼の姿は見当たらなかった。

 しかもカーテンの隙間から差し込む光に気付いた私は思わず飛び起きた。

(今、何時!?)

 もしかしたら既に仕事が始まっている時間なのではと思い焦った私が辺りを見回していると、

「起きたのか?」
「……翅くん?」

 部屋のドアが開いたのと同時に居ないと思っていた彼が姿を現した事に驚くと共に昨夜の事が頭の中にフラッシュバックして、自分の頬が紅潮していくのが分かる。

「身体、平気か?」
「え? あ、うん……大丈夫……」

 しかも、わざわざそんな事を訊かれるものだから余計に意識してしまう。

「それよりお前、仕事行くんだろ? 今七時半だけど、何時に出るんだ?」
「え? 七時半!? 嘘!?」

 翅くんから時間を聞いた私は焦っていた事を思い出し、再び慌て始めた。

 始業時間は九時からで、自宅アパートからだったら八時過ぎに出ても間に合ったのだけど、今居るマンションからだと以前よりも距離がある為、今すぐにでも出掛けないと恐らく間に合わない。

「もう出なきゃ、間に合わない!」

 慌ててベッドから降りた私は準備をする為自室へ戻ろうとした、その時、

「きゃっ!?」

 バランスを崩した私が転びそうになったところを、

「危ねぇな。つーか少し落ち着けよ」

 翅くんが支えてくれたおかげで転ぶ事はなく、半ば呆れ顔の彼に落ち着くよう宥められた。

「ご、ごめんね……ありがとう……」

 彼の言葉で一旦深呼吸をした後、慌ててしまった事を謝り、支えてくれた事に感謝の言葉を口にするも、翅くんは何故か私を見つめたまま、黙っている。

「……翅……くん?」

 そんな彼を不思議に思い、首を傾げながら名前を呼ぶと、

「つーか、そんな格好でくっついて来るとか、誘ってんの?」
「へ? 何……?」
「今の自分の格好、分かってんの? 誘ってんなら遠慮なく抱くけど?」

 訳の分からない言葉に、私が間の抜けた声を上げて問い返そうと彼の視線を辿りながら自分の身体に目を向けると、

「――ッ!?」

 私は服どころか下着すら付けていない状態だったのだ。
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