彼の愛に、堕ちて、溺れて。〜再会した幼馴染みの愛は、深くて重い〜
 そんな彼と、目が合う。

 カラーコンタクトをしているのか、彼の瞳は一見黒っぽい色味と思いきやよく見るとブルーやネイビーのような奥行きのある発色をしていて、思わず魅入ってしまう。

 髪色も相俟ってパッと見ハーフにも思えたけど、恐らく日本人だろう。

「……あ、の……」
「何?」
「あの方たちが話していた事、なんですけど」
「あ? ああ、金の話?」
「はい」
「そいつらの話した通り、戸部はうちの会社から定期的に金を借りてた。何度か返してたけど、最近は借りるばっかで返済が追いついてないようだったな」
「そんな……普通、返してもいないのに次々お金を貸すなんて……」
「ん? 何か言った?」
「あ……いや、その……何も……」

 赤髪男と黒髪男に比べるとこの人はあまり怖いという印象が無いのでついつい言い返してしまうも、急に雰囲気が変わり、笑みを浮かべているはずなのに何故だか背筋がゾッとした。

「ま、言いたい事は分からなくもねぇけど、こっちも商売なんでね。返してもらわねぇ訳にはいかないんだよ。つー訳で、連帯保証人のアンタに返済してもらう事になる。話、分かった?」
「…………」
「…………はあ。まあ、こういうところの連帯保証人なんて大体本人の知らねぇ間にってのが多いからな。理解出来ねぇ気持ちは分からなくもねぇが……。アンタ、名前は?」
「……相楽……実杏です」
「相楽…………実杏?」

 名前を聞かれたのでとりあえず名乗ると、何故だか彼は私の名前を呟きながら再度私の顔をまじまじと見つめてくる。

「あ、あの……?」

 そんなに見つめられると反応に困るのと、何かあるのかと疑問に思った私が問いかけようとした、その時、

「アンタ、実杏姉(みあねえ)……なのか?」
「え?」

 そう呟いた彼のその呼び方で、私の脳裏にある男の子が思い浮かんだ。

『実杏姉!』

 私をそう呼ぶのは、私の知る限り、一人だけ。

 私が高校二年生の頃まで隣に住んでいた五歳年下で弟のように可愛がっていた男の子だけが、一人っ子だった私の事を、そう呼んでいた。
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