彼の愛に、堕ちて、溺れて。〜再会した幼馴染みの愛は、深くて重い〜
「この車、翅くんの?」
「そうだけど。だったら何かあんの?」
「う、ううん……その、高そうな車だなって、思っただけ」

 車の事はそんなに詳しくはないけれど、高級感漂う黒のスポーツカーは明らかに値が張りそうに見える。

「まあ、それなりの値段はするけど、俺、金はあるし」
「そ、そっか……それじゃあ、お邪魔します」

 こんな高級車に乗るのは初めての経験で何だかつい緊張してしまいながらも、助手席に着いた。

「……あの、ところで、何処へ向かってるの?」

 彼が車を走らせてから暫く、何処へ向かっているのか気になった私はそれとなく尋ねてみる。

「俺の家だけど?」
「え? 翅くんの? どうして?」
「は? つーか、お前はこれから俺ん家に住むんだけど?」
「え!?」

 翅くんが当たり前のようにそんな事を口にしたので驚いた私は思わず大きな声を上げてしまう。

(今、何て言った? 私が、翅くんの家に住む? どうして?)

「うるせぇな。そんな驚く事かよ?」
「お、驚くよ! 大体、どうして私が翅くんの家に住まなきゃならないの?」

 正直、彼の言ってる意味が分からない。

 疑問だらけの私を前にした翅くんは、はぁーっと面倒臭そうに溜め息を吐きながら路肩に車を停めてシートベルトを外すと、何故か私に迫って来た。

「あのさ、いちいち言わなきゃ分からねぇの? 俺はお前の代わりに借金を肩代わりした。タダで肩代わりしてやると思ってんの?」
「え? いや、そんな事は思ってないけど……」
「じゃあどうするつもりだった訳?」
「どうするって……言われても……」
「少しは考えれば? 当然、返済するまで俺の役に立ってもらわねぇと困る訳。しかも、5000万円分」
「で、でも……だからってそれでどうして私が翅くんの家に住まなきゃいけないの?」

 考えてはみたけど、やっぱりそれで彼の家に住まなきゃいけない理由が分からなかった私が『どうして?』と問い掛けると、

「俺の家で、俺の身の回りの世話をする為に決まってんだろ? 勿論、夜の相手もな」

 顔を近付け、鋭い瞳で見つめながらそう言ったのだ。
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