【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「……これ、差し上げます」

 ポーションの箱の入った箱をルーシャン側に押し、凛とした声でそんな言葉を投げつける。すると、ルーシャンが目を見開いたのが分かった。

「……ドロシー嬢」
「勘違い、しないでくださいませ」

 顔を背けて、ドロシーはそう言う。

 しかし、ルーシャンにはその言葉の裏に込められた意味が、分かっていたのだろう。彼はくすっと声を上げて笑うと、「……素直じゃない」とボソッとつぶやいていた。……それが、ドロシーからすれば癪で。

「これ、全部でいくらになると思いますの?」

 だから、ドロシーは悪戯っ子のような笑みを浮かべて、そう口走っていた。

 実際、これだけの量と質のあるポーションを買おうとすれば、庶民の給金三ヶ月分程度に当たる。ドロシーたちにとってそれははした金かもしれないが、そんなことを言えば民たちに刺されかねないのだ。

「……はぁ、金をとるのか」

 ルーシャンの少し呆れたような表情が、ドロシーの目に映る。……正直に言えば、そんなつもりはこれっぽっちもない。お金の話を持ち出したのは、ルーシャンの言動が癪だったから。ただ、それだけ。

 そのため、今から告げる言葉は――。

「ですがこれ、代金は全部出世払いでいいですよ」

 お金はいらないという、意思なのだ。
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