【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
36.「……ルーシャン殿下は、ドロシーのことをどう思っていますの?」
 ☆★☆

 ドロシーとリリーが出て行った後。ルーシャンはぼんやりとポーションの入った箱を見つめていた。

 その中の一つを手に取れば、見るだけで分かった。……その質の良さが。

「……ダニエル、これ、運んでくれ」

 だからこそ、それだけを告げてルーシャンは立ち上がる。さすがに、他所の屋敷に長居することはできない。ここが、一応妻の実家であったとしても。ルーシャンが、婿入りする予定の家だったとしても。

「かしこまりました」

 ルーシャンの言葉に、ダニエルが端的に返事をくれる。そんなダニエルを一瞥し、ルーシャンは応接間を出る。

 ハートフィールド侯爵家の屋敷は、何度見ても素晴らしいものだ。貴族の屋敷とは、ゴテゴテとした趣味の悪い屋敷も多い。が、ハートフィールド侯爵家はどちらかと言えばさっぱりとした印象を与えてくる。……まぁ、ルーシャンはほかの貴族の屋敷をあまり知らないのだが。

(……本当に、俺はここに婿入りする予定だったんだな)

 父と母が勝手に決めた婚約だった。けれど、まさか相手があんな問題児だったとは想像もしていなかった、なんて。きっと、ドロシーはルーシャンにだけはそう言われたくないと思っているはずだ。実際、ルーシャンは王国内で「ひねくれ王子」や「引きこもり王子」などと呼ばれているのだから。

 そんなことを考え、玄関にたどり着けば、後ろからふと「ルーシャン殿下」と声をかけられた。……それは、女性の声。しかし、ドロシーのものではない。

「……はい」

 でも、知っている。ここに来るようになって、何度か会話をしているから。
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