【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「……あの子は、完璧に近しいはずです。ルーシャン殿下は、あの子の何が不満なのですか?」
凛とした声だった。
その声に、ルーシャンは息をのむ。不満など……不満など、ないのだ。初対面の時、離縁前提の結婚生活を提案された。ルーシャンは、それを都合がいいと受け入れた。それだけ。それから、二人の関係は……何も、変わっていない。
(俺は、きちんとドロシー嬢を見ようとしたか?)
向き合っていたつもりだった。けれど、実際はどうなのだろうか? 彼女の芯の強さを、理解したつもりになっていただけなのではないだろうか。
「……殿下、そろそろ」
ルーシャンの耳元で、ダニエルがそう声をかけてくる。確かに、そろそろ帰って明日の準備をしなければならない。
そう思い、ルーシャンは「……その回答は、また後日」とだけ告げ、玄関に向き直った。
「……どうか、あの子のことをきちんと見てあげてください。あの子は、あの子は――」
――誰よりも、優しいはずですから。
後ろからかけられたその言葉は、ルーシャンの耳にとてもよく残った。
理由など簡単だ。……きっと、ルーシャン自身もわかっていたから。ドロシーが、優しいということを。
(そもそも、優しくないと出世払いでポーションを渡さないな)
ダニエルが持つ箱を一瞥し、ルーシャンはそう思う。
(……きちんと、向き合わなくちゃな。帰ってきたら)
帰ってこれる保証などない。でも、帰らなくては。だって、ドロシーにお金を払わなくちゃならないのだから。
凛とした声だった。
その声に、ルーシャンは息をのむ。不満など……不満など、ないのだ。初対面の時、離縁前提の結婚生活を提案された。ルーシャンは、それを都合がいいと受け入れた。それだけ。それから、二人の関係は……何も、変わっていない。
(俺は、きちんとドロシー嬢を見ようとしたか?)
向き合っていたつもりだった。けれど、実際はどうなのだろうか? 彼女の芯の強さを、理解したつもりになっていただけなのではないだろうか。
「……殿下、そろそろ」
ルーシャンの耳元で、ダニエルがそう声をかけてくる。確かに、そろそろ帰って明日の準備をしなければならない。
そう思い、ルーシャンは「……その回答は、また後日」とだけ告げ、玄関に向き直った。
「……どうか、あの子のことをきちんと見てあげてください。あの子は、あの子は――」
――誰よりも、優しいはずですから。
後ろからかけられたその言葉は、ルーシャンの耳にとてもよく残った。
理由など簡単だ。……きっと、ルーシャン自身もわかっていたから。ドロシーが、優しいということを。
(そもそも、優しくないと出世払いでポーションを渡さないな)
ダニエルが持つ箱を一瞥し、ルーシャンはそう思う。
(……きちんと、向き合わなくちゃな。帰ってきたら)
帰ってこれる保証などない。でも、帰らなくては。だって、ドロシーにお金を払わなくちゃならないのだから。