【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
(何故、いきなり会うなど……)

 そんなことを思いながら、王族専用のスペースを見渡す。ここは王族以外では王族の配偶者、もしくは相当信頼されている侍従しか立ち入ることが出来ないスペースらしい。確かにドロシーは第二王子であるルーシャンの妻だが、完全にお飾りの妻以下の存在である。なのに、こんなスペースに入ってもいいのか。そんなことを心配しながら、ドロシーはダニエルの後をついて歩いた。

「え、えぇっと……」
「あ、俺はダニエルと申します。ルーシャン殿下の専属従者を務めさせていただいておりますので、以後お見知りおきを」
「ダニエル……ね。覚えました。では、ダニエル。何故、ルーシャン殿下はいきなり私に会うなどとおっしゃったのでしょうか? 気まぐれ……というだけでは、考えられないのよ」

 ドロシーは、ゆっくりとダニエルにそう問いかける。その瞬間、窓から心地の良い風が吹き、ドロシーの綺麗な金色の髪を揺らした。その髪は周囲の視線をくぎ付けにするには十分すぎる美しさを放っており、ダニエルにも一瞬見惚れたものの、すぐに「ゴホン」と咳ばらいをし、「俺も、よくわかりません」と告げることしか出来なかった。

「本当に殿下は気まぐれでして……。俺にも、分からないことが多々あるのです。殿下の専属の侍従は俺だけですので、俺にわからないことは誰に訊いてもわかりようがないでしょうし……」
「……ちょっと待って頂戴。ルーシャン殿下の専属の侍従は、ダニエルだけなの?」
「えぇ、そうですよ。まぁ、ほかの従者も度々助っ人に入ってもらいますが……。殿下は筋金入りの女性嫌いですので、侍女は絶対に部屋に入れませんから」
「まぁ……」

 そんなドロシーの声を聞いて、ダニエルは「やっぱり、驚かれたかな」と思った。しかし、実際は違う。ドロシーの感じた感情。それは……「同類だ」ということだった。
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