【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
 胸の前で手をぎゅっと握りしめ、ダニエルのことをもう一度見つめる。彼はその髪の毛を掻きながら、ドロシーのことを見つめていた。その目には、濁りなどない。今まで関わってきてよく分かっていたが、やはりダニエルはまっすぐな性格らしい。

「ところで、お話は変わるけれど王妃様は一体どういうご用件かしら?」

 かといって、このまま見つめ合うのもいただけない。自分は一応人妻なのだから。

 そんな風に思って話題を変えれば、ダニエルは「……わかりません」と申し訳なさそうに声を上げる。

「本日の朝、突然呼び出されたかと思えば王妃様に『ドロシー様を呼んできて頂戴』と言われただけなのです」
「……そう」

 王妃ディアドラは無駄なことをしないタイプだと、ドロシーは思っている。元々は線の細いか弱い女性だったと聞くが、今はどちらかと言えば強かな女性だ。もしかしたら、王子を三人も産んで変わったのかもしれない。いや、夫に溺愛されているというし、そちらが根本の原因なのかもしれない。なんて、考えたところで今は無駄なのだが。

「ただ、多分緊急の用件でございます。王妃様は無意味なことはされません」
「そう、やっぱり」

 ダニエルがそう言うのならば、間違いないのだろう。

 そう思いながらドロシーが馬車に揺られていれば、ダニエルは「……こちら、を」と言って小さな箱をドロシーに差し出してきた。
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