【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「……えぇっと」
「私、息子しかいないから。娘とこうやってお話するのが、夢だったの」
そう言いながら、ディアドラはドロシーを見据えてくる。その紫色の目は、とても愛らしく何処となくルーシャンに似たものを感じさせた。その所為で、ドロシーの心が揺れる。
「そう、なのですか」
ルーシャンのことを思いだすと、どうしようもなく気分が沈む。だからこそ、ドロシーはそんな言葉しか言えなかった。
そんなドロシーを一瞥し、ディアドラは「なんて、こんな時に言えるほど私も図太くないのよ」と言ってその美しい目を伏せる。
「息子が危険にさらされているのに、のんびりとお嫁さんとお話をできるほど私は図太くないの」
「……はい」
「あの人は大丈夫だって言うけれど、私はそうは思わないわ」
ディアドラの言うあの人とは、大方国王のことなのだろう。それは容易に想像が出来た。
「私にとってあの子たちは、何よりも大切な存在よ。……だから、無事に帰ってきてほしいの」
ディアドラが手をぎゅっと握りしめたのが、ドロシーにも分かった。多分、彼女も恐ろしいのだ。息子を失うことが。……ドロシーが、ルーシャンを失いたくないと思っているのと同じで。いや、それ以上に。
(……けれど、どうして王妃様は私にそんなことをおっしゃったの?)
彼女は先ほど、のんびりとお話をしている場合ではないと言っていた。なのに、今は完全に世間話をしているような空気である。
それを怪訝に思っていれば、ディアドラは「……ドロシーさんに、お願いがあるのよ」と言ってドロシーのことを見据えてきた。
「私、息子しかいないから。娘とこうやってお話するのが、夢だったの」
そう言いながら、ディアドラはドロシーを見据えてくる。その紫色の目は、とても愛らしく何処となくルーシャンに似たものを感じさせた。その所為で、ドロシーの心が揺れる。
「そう、なのですか」
ルーシャンのことを思いだすと、どうしようもなく気分が沈む。だからこそ、ドロシーはそんな言葉しか言えなかった。
そんなドロシーを一瞥し、ディアドラは「なんて、こんな時に言えるほど私も図太くないのよ」と言ってその美しい目を伏せる。
「息子が危険にさらされているのに、のんびりとお嫁さんとお話をできるほど私は図太くないの」
「……はい」
「あの人は大丈夫だって言うけれど、私はそうは思わないわ」
ディアドラの言うあの人とは、大方国王のことなのだろう。それは容易に想像が出来た。
「私にとってあの子たちは、何よりも大切な存在よ。……だから、無事に帰ってきてほしいの」
ディアドラが手をぎゅっと握りしめたのが、ドロシーにも分かった。多分、彼女も恐ろしいのだ。息子を失うことが。……ドロシーが、ルーシャンを失いたくないと思っているのと同じで。いや、それ以上に。
(……けれど、どうして王妃様は私にそんなことをおっしゃったの?)
彼女は先ほど、のんびりとお話をしている場合ではないと言っていた。なのに、今は完全に世間話をしているような空気である。
それを怪訝に思っていれば、ディアドラは「……ドロシーさんに、お願いがあるのよ」と言ってドロシーのことを見据えてきた。