【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「貴女は、趣味で薬学をかじっているそうね。侍女に聞いたわ」
「……はい」

 以前、王城の中庭で薬草をもらう許可を得る際に、ドロシーは「薬学をかじっているのです」と説明をした。実際はかじっているなんてものではないものの、がっつり働いているとは言えなかったのだ。

「どうか、私に貴女の作ったお薬をいただけないかしら?」

 凛とした声。でも、何処となく震えたような声。それにドロシーが驚いていれば、ディアドラはうつむきながら「……貴女の腕を、私は買ったわ」と続ける。

「貴女のことをいろいろと調べて、貴女の腕が相当なものだとわかったの。そこら辺の薬師よりもずっと頼りになるわ」
「……それ、は」
「ねぇ、お願いできないかしら?」

 その声がひどく震えていたため、ドロシーの胸がずきんと痛む。ディアドラはそれだけ息子のことを思っているのだ。そして、自分にできることがないかと考えた。その結果が、ドロシーに頼るということだった。

「代わりに、貴女の欲しいものは何でも用意するわ。宝石でもドレスでも、どれだけ高価なものでも用意する。だから、お願いできないかしら?」

 それは、まるで縋るような言葉だった。ディアドラの震えた手と声に、ドロシーの心が乱される。

 そのため、ドロシーは「……わかり、ました」とゆっくりと返事をした。
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