【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
 しかし、ディアドラには今まで聖女をまとめてきたという実績がある。そんな、突然ドロシーに役割を譲るなど聖女たちが納得するわけがない。そういう意味を込めて彼女のことを見つめれば、彼女は「私の権限をすべて貴女に一時的に譲渡するわ」という言葉を発する。

 それから、ディアドラはパンパンと手をたたいた。すると、部屋の外から数名の侍女がやってくる。

「今後の後方支援の指揮は彼女が執るわ。旦那様方に、お伝えして頂戴」
「かしこまりました」
「あと、聖女たちにもこのことを」
「はい」

 ディアドラは素早く侍女たちに指示を出していく。侍女たちはディアドラの意見に逆らうことなく淡々と従っていた。それを呆然と見つめていれば、ディアドラは「……これで、大丈夫よ」と言葉をくれる。

「で、ですが……」
「私の意思であるとわかっている以上、旦那様も聖女も文句は言いません。……いいえ、言わせないわ」

 ころころと笑いながらディアドラはそう言う。そして、「……ルーシャンのことを、よろしくね」という言葉で会話を締めくくろうとする。

「貴女のような女性があの子の妻であれば、きっと楽しいわ」
「えぇっと……」
「王家の男は女がかじ取りしてやらないとダメなのよ」
「い、いえ、その……」
「今度はゆっくりお話ししましょうね」

 ディアドラの言葉に反論する暇もなく、彼女は会話を打ち切ってしまう。そのため、ドロシーは何も言えなかった。
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