【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「リリー。頼んでいた薬草は?」
「午後には届くそうです」
「そう。届いたら調合部屋に運んでおいて頂戴」
「かしこまりました」

 出来る限り使うお金は減らす。そのうえで効力の高いポーションを手に入れるのならば、自分で調合するに限る。だが、それでは時間がかかってしまう。そのためドロシーが考えたのは――市販のポーションの改良だった。

 これならば、調合時間は半分で済む。それに、安くもつくのだ。基本的に売られているポーションの値段の大半は人がかけた手間賃だ。その手間をドロシーが負担すれば、そこまで高額になることはない。

「ドロシー様。王妃様からご報告がありまして、結界を再度張るためにはやはり後一週間は必要だと……」
「そう、わかったわ。ということは、ここ一週間が正念場ね」

 報告に来た王宮の従者にそう返事をして、ドロシーは颯爽と動き始める。ドロシーは元々引きこもりと言うこともあり体力はない。けれど、ぶっ倒れている場合ではない。そう思っている。

(王妃様が私を信じてくれたのよ。私はやらなくちゃ。それに……)

 ぎゅっと手元の紙を握りしめディアドラとの約束を思い出す。

 ディアドラはさすがにドロシーに褒美を与えないのは問題だと言っていた。そういうこともあり、ドロシーの欲しいモノを何でも一つ用意すると言ってくれた。

 だからこそ、ドロシーはディアドラに『薬草園が欲しい』と強請ってみたのだ。その結果、ディアドラは今回のことが無事に事済めば近くに調合部屋を完備した薬草園をドロシーにプレゼントしてくれると。

(薬草園のためよ。そう、これはそのため!)

 自分自身にそう言い聞かせる。確かに王子の妻としてやらなければならないことは理解しているし、ルーシャンに無事に帰ってきてほしいという気持ちもある。が、その二つ以上に薬草園は魅力的だった。
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