【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
 そんな彼を見送り、ドロシーはそっとため息をつく。先ほどの言葉はあくまでも表向きの言葉である。ドロシーは王子の妻であることに執着はないし、民の声に耳を傾けるべきは自分ではないと思っている。が、あの場でああいわなければダニエルは納得しなかっただろう。もしも彼がルーシャンにドロシーのことを託されているのだとすれば。いい噂を持たない人間をドロシーに近づけることはしないだろうから。

(だけど、一応私の意見を聞いてくれるから助かったわ)

 もしも、ダニエルがそのままエイリーンを追い出していたとしたら。それはそれで情報を得るチャンスを逃してしまう。そうならなかったことを今は安堵しよう。そう思い、ドロシーは近くにいた聖女の一人に声をかける。

「どうにも、私に客人が来たみたいなの。……情報提供があるかもしれないから、しばし席を外すわ」
「……かしこまりました。しばらくの指揮は誰が執りましょうか?」
「貴女にお願いするわ」

 聖女と小さな声で会話を交わし、ドロシーは第三休憩室に向かって歩き出す。

(……エイリーン・ブラックウェル、か)

 彼女自身のことはそこまで詳しくは知らない。だが、ドロシーが侯爵家の令嬢である以上、意図せずに貴族の噂は耳に入ってくるものである。

 エイリーンはルーシャンを好いている。それはドロシーも知っていることだ。というか、ルーシャン自身から言い寄られて迷惑だと以前聞かされてる。相談も受けた。……まぁ、ドロシーはそれを適当にあしらってしまったのだが。
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