【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
5.「ですから、私、考えましたの。――私たち、これから一年後に離縁しましょう」
それから数分。ドロシーとルーシャンはただ無言で見つめあっていた。ルーシャンの顔立ちは、見れば見るほど芸術作品のように整っており、その目には絶対零度のオーラを備えている。それに息をのみながら、ドロシーはゆっくりと深呼吸をした。そして、まっすぐにルーシャンの目を見つめたまま「言いたいことが、一つ、あるのですが」と告げた。
「……言いたいこと?」
「えぇ、それはとっても、とーっても大切な言いたいことです」
ルーシャンの問いかけに、ドロシーはそう返して「よろしいでしょうか?」と再度確認を取ってくる。そのため、ルーシャンはしばし考えた。普通の女性ならば、きっと今までの不平や不満などを連ねるのだろうが……どうにも、ドロシーはそんなことを言いそうにはない。ドロシーの目には、ほかの女性には感じられないほどの強い意志が宿っており、到底普通のことを言うとは思えなかったからだ。
「……いいけれど、何?」
そのため、ルーシャンは余所行きの口調をやめ、いつも通りの軽めの口調に直す。ドロシーには、多分どう偽っても無駄だ。そう思ったというのも、あった。それに、もう一つ理由があった気もするのだが……それは、考えない方向で行く。
「では、僭越ながら私の気持ちを述べさせていただきます。……私、ルーシャン殿下にお会いしたらこんな提案をしてやろうと、数か月前から思っておりましたの」
そう言ったドロシーは、優雅なカーテシーを披露しもう一度ルーシャンを見据えた。首元まである緩くウェーブのかかった茶色の髪。おっとりとして見える形の紫色の目。見れば見るほど、その容姿は作りもののようであり、現実の人間だとは思えない。だが、その表情は無であり、それが冷たい印象を与えてくるのもまた真実。
「……言いたいこと?」
「えぇ、それはとっても、とーっても大切な言いたいことです」
ルーシャンの問いかけに、ドロシーはそう返して「よろしいでしょうか?」と再度確認を取ってくる。そのため、ルーシャンはしばし考えた。普通の女性ならば、きっと今までの不平や不満などを連ねるのだろうが……どうにも、ドロシーはそんなことを言いそうにはない。ドロシーの目には、ほかの女性には感じられないほどの強い意志が宿っており、到底普通のことを言うとは思えなかったからだ。
「……いいけれど、何?」
そのため、ルーシャンは余所行きの口調をやめ、いつも通りの軽めの口調に直す。ドロシーには、多分どう偽っても無駄だ。そう思ったというのも、あった。それに、もう一つ理由があった気もするのだが……それは、考えない方向で行く。
「では、僭越ながら私の気持ちを述べさせていただきます。……私、ルーシャン殿下にお会いしたらこんな提案をしてやろうと、数か月前から思っておりましたの」
そう言ったドロシーは、優雅なカーテシーを披露しもう一度ルーシャンを見据えた。首元まである緩くウェーブのかかった茶色の髪。おっとりとして見える形の紫色の目。見れば見るほど、その容姿は作りもののようであり、現実の人間だとは思えない。だが、その表情は無であり、それが冷たい印象を与えてくるのもまた真実。