【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「ルーシャン殿下。私たちの結婚生活は、とてもではありませんが夫婦生活と呼べるものではありません」
「……そうだね」
「ですから、私、考えましたの。――私たち、これから一年後に離縁しましょう」
「……はぁ?」

 ドロシーの突然の離縁宣言に、ルーシャンは柄にもなく素っ頓狂な声を上げ、その無だった表情を崩してしまった。何故、自らは今離縁の予告を受けているのだろうか。そもそも、離縁を告げる場合はこちらからだと思っていたのに。そんなことを思いながらも、ルーシャンは冷静を装い「そう。理由は?」とだけ端的に言葉を返した。内心は、結構パニックだったのだが。

「そんなの簡単です。私たち、とてもではありませんが夫婦とは言えない関係でございます。私は今まで世間体とたった一つの目的を達成するt前に、ルーシャン殿下の元に通い詰めてきました。ですが、私もうこのような生活には飽き飽きなのでございます」

 元より引きこもりがちな娘が、毎日のように太陽の下に出てくるのは無茶だったのだ。そんなことを思いながらも、ドロシーは目を大きく見開くルーシャンに微笑みを向ける。そして、口元を緩めた。

「ルーシャン殿下を一目見たとき、私、確信を持ちましたの。あぁ、私と同族だって」

 そう言いながら、ドロシーはルーシャンに一歩だけ近づいた。その際に、ルーシャンが一歩退いたのを見逃さない。

「同族はうまくやっていける場合もありますが、大体は同族嫌悪で互いを嫌います。そう、つまり私たちの関係が良好になる可能性は限りなく低い。……お分かりで?」
「あ、あぁ」
「でも、今離縁するといろいろと面倒ですし問題だらけではありませんか。一度も会わないまま婚姻し、そのまま離縁なんて女神様が天で大爆笑しちゃうぐらいの問題です。なので、私は考えました」

 ――これから一年後に、円満離縁しましょう!

 そんなことを満面の笑みで言うドロシーの考えが、ダニエルにはわからなかった。そもそも何なのだろうか、「円満離縁」とは。そう思いながら、ルーシャンの様子を窺えば、ルーシャンは呆然としているようだ。それに、こっそりとダニエルは安堵した。どうやら、意味が分からないのは主も一緒らしい。
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