【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「あぁ、貴方は確か殿下の……」
「えぇ、専属従者のダニエルです。殿下の容体はどうなっておりますか?」

 ダニエルが医者と会話をしている。その間、ドロシーは何もできなかった。ドロシーは薬師ではあるものの、医者ではない。医者の用語を聞いたところで何もできないのだから。

「ドロシー様。……行きましょうか」

 それからしばらくして、ダニエルがドロシーに視線を向けてそう言ってくれる。なので、ドロシーは頷いた。しかし、医者が「待ってください」とそれを止める。

「そのお方は、どちら様でしょうか? 関係者以外は……」

 医者がゆるゆると首を横に振りながら止めてくるためだろうか。ダニエルは「ルーシャン殿下の、奥様です」と凛とした声で告げる。

「それに合わせ、彼女は優秀な薬師です。なので、縫合が終わっているのならば彼女にも出来ることがあるかと」

 医者の目をまっすぐに見つめ、ダニエルはそう言う。だからだろうか。医者は「……貴方が、そこまでおっしゃるのならば」と言ってくれる。

「ドロシー様。行きましょうか」

 そう声をかけられ、ドロシーはこくんと首を縦に振る。そして、ダニエルに続いてルーシャンが休んでいるという私室に入っていく。

(……どうか、ご無事で)

 そう思うのは、どうしてなのだろうか? やはり、未亡人になりたくないからなのだろうか? いや、それ以上にやはり――。

(謝罪、してもらわなくちゃ)

 こんなにも心配をかけたこと。今までの態度。すべてについてを謝罪してもらわなくちゃ。ドロシーの気が済まないのだ。
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