【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「……殿下」
「ドロシー嬢をここに寝かせておいてやれ。……疲れてるだろ」

 どうしてみなまで言わないといけないのだ。そう思いながらルーシャンがダニエルにそう告げれば、彼は「……かしこまりました」と言って深々と一礼をする。

「ですが、殿下がソファーで眠ることを許容わけにはいきません。隣の部屋を整えてありますので、そちらでお休みください」
「……そうか」

 まぁ、それならばこっちが折れてやってもいいか。

 そう判断し、ルーシャンはゆっくりと寝台から降りる。それを見計らって、ダニエルがドロシーを起こさないようにと移動させていた。

「……ドロシー嬢は、よくこんなところで寝れるな」

 ドロシーを寝台に寝かせ、毛布を掛けたのをみて思わずそう零す。すると、ダニエルは「相当、心配だったのでしょうね」と苦笑を浮かべながら言ってくる。

「ドロシー様、ルーシャン殿下に声をかけていらっしゃいました。……まぁ、内容は……その、悪態と言いますか」
「……そりゃそうだろうな」

 少なくとも、ルーシャンの知るドロシーは素直な言葉をぶつけてくるようなタイプではない。だから、ダニエルの言葉には信ぴょう性がある。

「ま、なんだかんだ言っても――」

 ――ドロシー嬢とならば、一生を添い遂げてもいいかもしれない。

 小さくそう呟いて、自分で驚く。だが、幸運にもその言葉はダニエルには聞こえていなかったようで。そっと息を吐いた。

 そして、ドロシーのさらさらとした金色の髪を一度だけ撫でる。……大層、触れ心地はよかった。
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