【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「……おい」
「私、元々ルーシャン殿下が目覚めるまでのつもりでしたから。……目覚められた今、私がここにいる理由はありません」
そのまま身に纏っているワンピースをきれいに整え、歩き出そうとする。しかし、その手首をほかでもないルーシャンに掴まれた。驚いてそちらに視線を向ければ、彼の紫色の目とばっちりと視線が交わってしまう。
「……なぁ、ドロシー嬢」
真剣な面持ちで声をかけられ、ドロシーの胸がとくんと音を立てた。もしかしたら、もしかしたら――そんな想像をして、それはないと思いなおす。彼のことだ。どうせ「冗談だ」とか言って蹴り飛ばしてしまうのだから。
ルーシャンの手がドロシーの髪の毛に伸びる。そのまま彼の手はドロシーの髪の毛を撫でた。……とても優しい手つきだった。
「――寝ぐせ、ついているぞ」
だが、何もそんなことをそこまで真剣な面持ちで言わなくてもいいだろう。
そんなことを思いながら、ドロシーは顔に熱をためる。カーっと熱くなった頬を押さえこみ――。
「――そんな真剣な表情で、おっしゃらないでくださいっ!」
と叫んだ。
(意識した私が、バカだったわ……!)
そして、そう思う。無駄にドキドキして、彼を意識して。そんな自分が本当にバカだった。
そう思いながら、ドロシーは自身の髪を撫でつけ寝癖を直して、「今度こそ、帰ります!」と言葉を告げて部屋を出て行った。
部屋を出て行く前に、小さく「……面白いよな」というような言葉が耳に届いたのは、気のせいだと思うことにした。
「私、元々ルーシャン殿下が目覚めるまでのつもりでしたから。……目覚められた今、私がここにいる理由はありません」
そのまま身に纏っているワンピースをきれいに整え、歩き出そうとする。しかし、その手首をほかでもないルーシャンに掴まれた。驚いてそちらに視線を向ければ、彼の紫色の目とばっちりと視線が交わってしまう。
「……なぁ、ドロシー嬢」
真剣な面持ちで声をかけられ、ドロシーの胸がとくんと音を立てた。もしかしたら、もしかしたら――そんな想像をして、それはないと思いなおす。彼のことだ。どうせ「冗談だ」とか言って蹴り飛ばしてしまうのだから。
ルーシャンの手がドロシーの髪の毛に伸びる。そのまま彼の手はドロシーの髪の毛を撫でた。……とても優しい手つきだった。
「――寝ぐせ、ついているぞ」
だが、何もそんなことをそこまで真剣な面持ちで言わなくてもいいだろう。
そんなことを思いながら、ドロシーは顔に熱をためる。カーっと熱くなった頬を押さえこみ――。
「――そんな真剣な表情で、おっしゃらないでくださいっ!」
と叫んだ。
(意識した私が、バカだったわ……!)
そして、そう思う。無駄にドキドキして、彼を意識して。そんな自分が本当にバカだった。
そう思いながら、ドロシーは自身の髪を撫でつけ寝癖を直して、「今度こそ、帰ります!」と言葉を告げて部屋を出て行った。
部屋を出て行く前に、小さく「……面白いよな」というような言葉が耳に届いたのは、気のせいだと思うことにした。