【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
52.「では、こうしましょう」
 それからしばしの月日が流れ。

 気が付けば、ルーシャンとドロシーが対面してから早くも半年の月日が流れた。

 あれ以降も週に一度の交流は続いている。そして、今日はその日だった。

「そういえば、エイリーン嬢のことなんだけれどさ」

 不意にルーシャンがそう声を上げる。それを聞いて、ドロシーは紅茶の入ったカップを戻しながら「そういえば、一昨日が裁判でしたっけ」と言いながら小首をかしげる。

「そうそう。……北の修道院に行くことが決まったってさ」

 ルーシャンのその言葉を聞いて、ドロシーは「あっけない最後でしたね」と言葉を返す。

 エイリーンはあの後ブラックウェル公爵家を勘当され、罪人となった。処罰は裁判で決められることになり、一昨日がちょうどその日だったのだ。それは、ドロシーもディアドラから聞かされている。

「……恋って、人を愚かにするものなんだね」

 ボソッとルーシャンがそう零すので、ドロシーは目を見開いてしまった。まさか、ルーシャンがそんなことを言うとは夢にも思わなかったのだ。だからこそ、ドロシーは「ルーシャン殿下」と彼の名前を呼ぶ。

「……どうした?」
「――ルーシャン殿下も、ついにお好きな人が出来たのですね!」

 手をパンっとたたいてニコニコと笑いながらそう言えば、ルーシャンが何故か苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべる。その表情にドロシーは気が付いていたが、あえて気が付いていないようなふりをする。

「私と離縁して、そのお方とどうかお幸せになってくださいませ。あと半年の辛抱です」

 ニコニコと笑いながらそう言えば、ルーシャンは「……そのこと、何だけれどさ」と真剣な面持ちでドロシーに言葉を告げる。

「――俺、ドロシー嬢と離縁したくないから」
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