【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「……そういえば、ドロシー嬢の好きなものも嫌いなものも、趣味さえも知らないなぁ」

 普通ならば、婚約者時代にいろいろと知っておくべきことなのだろうが、ルーシャンとドロシーは婚約者時代に対面したことは一度もない。それどころか、婚姻後三か月も会っていないのだ。ドロシーの言葉を借りるのならば、「女神様も天で大爆笑ものの結婚」だろうか。

「さて、いろいろとダニエルにドロシー嬢について調べておくように、指示でも出しておくかなぁ」

 ……今までのルーシャンならば、女性に興味など微塵も持たなかった。ましてや、調べておいてもらおうなどと思うことなど一度もなかった。しかし、ルーシャンはそれに気が付かない。……自分が、ドロシーに興味を持っているなど、認めたくなかったのかもしれない。……これも、円満な離縁に向けた準備だ。そう、自分自身に言い聞かせていた。

 こんなことを思っている時点で、ルーシャンはドロシーに興味を持ってしまっている。きっと、ダニエルならばそう指摘しただろうが……生憎、今ここにダニエルはいない。まぁ、そちらの方がダニエルにとってもルーシャンにとっても、よかったのかもしれないのだが。ルーシャンは無駄に怒る必要が減り、ダニエルは殺意を抑え込むことが出来た。何事も、ポジティブに考えるのが大切なのである。
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