【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
7.「……いえ、お嬢様。それはとてもではありませんが、結婚生活とは言えませんよ」
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「リリー! リリー!」

 ハートフィールド侯爵邸に帰ってきたドロシーは、真っ先に自室を掃除しているであろうリリーのことを呼んだ。リリーは度々王城に同行しているが、本日は通常業務にあたっていた。ドロシーは邸に帰ってくると、いつもあっさりと「会えなかったわ」というだけである。しかし、本日はどうにも様子が違う。帰ってきていきなり、リリーのことを呼んだのだ。

「お嬢様? どうなさったのですか? 本日もどうせ会えなかった……」

 リリーはドロシーに顔を見せながら、どうせいつも通り会えなかったのだろうと考える。だが、ドロシーはただ一言「いえ、会えたわよ」とあっけらかんと答えるので、リリーは「……はいぃ?」と間抜けな声を上げてしまった。その後「……ついに、お嬢様は幻覚を見てしまったのですか?」と不敬な言葉を口走ってしまった。

「リリー。貴女、失礼じゃないかしら? 私が幻覚を見ただなんて……」
「で、ですが、ルーシャン殿下ですよ? あの人嫌いのルーシャン殿下が、いきなりお嬢様に会うなんて、そんな……」
「私も驚いたわ。けど、本当なの。それに、ルーシャン殿下にお会いできたから、私も自分の気持ちを伝えることが出来たのよ」
「……それは、おめでとう、ございます?」

 ドロシーの言葉に、リリーはそんな風に返す。ドロシーの言う自分の気持ちとは、大方この間リリーに一方的に語ってくれた「円満離縁計画」のことだろうか。だが、あの計画はとても無謀なものであり、拙い……というか雑なものだ。「一年後に離縁する」ということを最終目標に掲げただけのもの。あれでは、了承されるわけがない。
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