【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「さて、リリー。というわけで、私はルーシャン殿下と週に一度だけ会うことになったの。週に一度だけ会って、退屈な結婚生活を送るの」
「……いえ、お嬢様。それはとてもではありませんが、結婚生活とは言えませんよ」
「あら、貴女もそう思う? 私もそう思うのだけれどね。でも、私は大層男性が苦手だし、ルーシャン殿下は大層女性が嫌い。そんな私たちの精一杯の譲歩が、これなのよ」
「では、何故ルーシャン殿下はお嬢様と婚姻したのですか……」

 ドロシー側の婚姻理由は、リリーだって知っている。しかし、ルーシャン側の理由は一切わからない。何故、わざわざドロシーだったのだろうか。ドロシーは別に気にもしていないどころか、「ラッキー」ぐらいにしか思っていないだろうが、普通の令嬢ならば暴れ狂う案件である。

「そんなの、知らないわ。でもいいじゃない。これは双方にとってメリットがあるのだから。それに、結婚生活なんて人それぞれよ。本人たちが『これは結婚生活だ!』って言えば、そうなるの。別居婚だろうが、同居婚だろうが、結婚生活に変わりはないわ」

 確かに、そんなドロシーの言葉には一理ある。だが……いいや、本人たちが納得し満足しているのだから、自分が口出しをするわけにはいかない。リリーはそう思い直し、「かしこまりました。私は何も言いません」とだけ告げた。それに納得してくれたのか、ドロシーは「さぁ、お茶を飲みましょう。私、喉が渇いたから貴女を呼んだのよ」と言い、ソファーに腰を下ろす。そのため、リリーは慌ててお茶を入れに走った。

(……本当に、お嬢様は変な人なのですから……)

 決して口には出さないが、心の中でリリーはそうぼやく。ドロシーの大好きな茶葉で紅茶をいれながら、ゆっくりと深呼吸をした。……しかし、これからどうなるのだろうか。そう思ってしまうと、気が重くなりため息が零れてしまう。ドロシーはご機嫌だが、自分はどうにもご機嫌になれないなぁ。そんなことを、思ってしまったのも関係していた。
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