【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「へぇ、どんな仕事?」

 しかし、意外にもルーシャンはドロシーの仕事について食いついてきた。それに軽く驚きながらも、ドロシーは「……調合の、仕事です」とだけ端的に返し、ノートに思いついたレシピをまとめていく。調合は腕の勝負でもあるが、アイデア勝負の部分もある。いかにして、今まで誰も思いつかなかった効果の高いポーションのレシピを作るか、ということも重要だ。もしもそれを生み出すことが出来れば、レシピとして販売することも可能だからだ。

「……調合って言うことは、薬とかを作ったりする仕事? ポーションとか」
「まぁ、そう言うことになります……かね」

 調合の仕事に就くのは下位貴族の人間、もしくは優秀な平民と相場が決まっている。薬学は一歩間違えれば命を奪ってしまう。そう言うこともあり、学のある人間が就くのが常。だが、高位貴族が就く職種ではない。高位貴族は泥にまみれ薬草を探したり、徹夜してレシピを考案するのを嫌う傾向にある。

「……バカにするのならば、してくださって構いません。ですが、これは私の生きがいなのです」

 ドロシーは、ずっと調合が大好きだった。しかし、その趣味を認めてくれるのは家族やごく一部の人間のみ。大体の人間は「侯爵家の娘なのにはしたない」とバカにしてくるだけだ。高位貴族の娘は、良妻賢母を目指し学び、婚活をするのが普通だから。だが、ドロシーは「普通」や「常」という言葉を毛嫌いしていた。「普通」という枠の中に、納まりたくなかった。
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