【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「さようでございますか。……あ、そろそろ私は失礼いたします。もう、時間ですので」

 ふとドロシーが時計を見つめていれば、もう帰る予定の時間を少しばかり過ぎていた。そろそろ、帰らなくては。両親や使用人たちが心配するだろう。そう思い、ドロシーはゆっくりと広げていたペンやノートを片付けていく。

(初めはどうなるかと思ったけれど、案外うまく話せてよかったわ)

 片づけをしながら、ドロシーはそんなことを考えていた。リリーの言う通り、勇気をもってポーションの話をしてよかった。今ならば、そう思える。翌週もこの調子でポーションや薬の話をすれば、時間はあっという間に過ぎるだろう。さすがに一年間ずっとこの話題は無理かもしれないが、それでもその時はまた新しく考えればいい。

「では、ルーシャン殿下。失礼いたします。リリー、帰りましょう」
「はい、お嬢様」

 その後、ドロシーはゆっくりと立ち上がり綺麗な一礼を披露すると、リリーを連れて部屋を出ていこうとする。最後に「また来週」と振り返って言おうとしたとき。不意に、ルーシャンが「待って」と声をかけてきた。それに、ドロシーは驚いてしまう。

「はて、何でございますか?」
「いや、俺はドロシー嬢の仕事に興味がある……って言ったよね?」
「えぇ、まぁ」

 確かに、ルーシャンは会話の最中に何度も「ドロシー嬢の仕事に興味がある」と言ってくれていた。だが、それは所詮話題を合わせるためのものだろう。そう、ドロシーは受け取っていたのだが……ルーシャンの態度を見るに、それはどうやら違うようだ。
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