【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「あら、変人上等よ。私、自分の興味のあることはとことん追求する性質だもの」

 ドロシーはリリーのその言葉に、嫌な顔一つせずにあっさりとそう返し、タッパーにふたをする。

 ルビー草とは、ルビーのような赤をしていることから名づけられた治癒能力の高い草である。ここら辺では採取することが出来ず、王国の南側でしか自生しないことで有名だ。今は栽培も出来るが、あまり採れないと有名なレアな草である。

 もう一つのウェットン草はウェットンという人物が見つけたことからその名がつけられた、解毒作用のある草である。こちらは比較的安価で手に入り、栽培もしやすい。

 この二つを組み合わせ、さらに特定の治癒魔法をかければ効力の高いポーションが出来る。これはドロシーが生み出したレシピであり、世にいう特許もドロシーのものだ。このレシピのおかげで、ハートフィールド侯爵家の懐がとても潤ったのは記憶に新しい。

「お嬢様。ルーシャン殿下がお見えになりました」

 そんな時、ふと一人の侍女がそうドロシーに声をかける。それを聞いたドロシーは、部屋のカーテンを開け玄関側を見下ろした。確かに、見慣れぬ馬車が一台止まっている。

「分かった。すぐに行くわ」

 そのため、ドロシーはゆっくりとカーテンを閉めて部屋を出ていく。その足取りは、やはり優雅だった。

(気乗りはしないけれど、調合に興味を持ってくださったのは素直に嬉しいわ)

 心の中でそう呟きながら、ドロシーは屋敷の玄関に向かうのだった。
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