【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
2.「……お嬢様のそう言うちゃっかりとしたところ、私は好きですよ」
 心地よい風が吹き、淡い色の花を揺らす。季節は春。ネイピア王国は比較的四季が豊かであり、それを楽しむ貴族も少なくはない。貴族の屋敷の庭には、季節の花を植え、そこでお茶会を開くのもネイピア王国の常。……まぁ、例外ももちろんあるのだが。

 そして、ネイピア王国の名門侯爵家ハートフィールド侯爵家の屋敷は……今日も、ざわめいていた。

「お嬢様~。本当に、本当に本日も王城に向かわれるのですか?」
「当り前じゃない。いい加減ルーシャン殿下に会わなくては、いけないもの。文句の一つや二つ言わなくちゃ、気がおかしくなりそうだし」

 ツンと澄ましながら、自分の髪の毛を整えるドロシーを見つめながら、彼女の専属侍女を務めているリリーは「もう、諦めましょうよ」なんて口走っていた。しかし、ドロシーは聞く耳も持ってくれない。正直に言えば、ドロシーだってもう王城になど出向きたくない。だが、ここで諦めたら負けだ。そう、三か月も前から思い続けている。

「そりゃあ、私だってお嬢様を蔑ろにするルーシャン殿下には怒りしか湧きませんが……。それでも、そんな目の下に隈を作られているのですから、本日ぐらい行かなくても……」
「あら、こっちの方がいろいろと便利じゃない? ルーシャン殿下に会えなくて傷心中です~って、印象付けられるじゃない」
「……お嬢様の目の下にある隈は、傷心したからではなく仕事関連で依頼があったからではございませんか……」
「まぁ、そうだけれどね」

 リリーのそんな言葉に、ドロシーは返事をしながら目の前にある瓶に入った液体を見つめた。
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