【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「まぁ、大体のことは屋敷で全て済ませてしまますが、出来ないこともありますから。そういう時は、度々仕入れに向かいます」

 直に薬草を見ることも必要だ。そう、ドロシーは思っていた。そのため、三ヶ月に一度のペースで市場に出向き、仕入れを行う。父や母はそれを咎めはしない。いつも「ドロシーは好きなことをしているときが、一番輝いているね」というだけだ。

「どうぞ、散らかっていますが」

 それから数分後。ルーシャンはドロシーの調合部屋に足を踏み入れていた。今まであまり足の踏み場がなかった床は綺麗に片付けられており、本は棚に綺麗に整理されている。薬草や試作品が入った棚は厳重に鍵がかかっているようで、そう簡単には取り出せそうにない。カーテンは暗めの色であり、集中するときに外界を遮断する目的だろうと容易に想像がついた。

(……女らしくない)

 ルーシャンはそんなことを思いながら、ドロシーに勧められ椅子に腰を下ろす。女性の部屋とは、もっときらきらとしていて色鮮やかなものではないのだろうか。そう思いながら、ルーシャンは「部屋、地味だね」とドロシーに声をかける。
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