【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
15.「……調合バカ?」
「見てほしいもの?」

 ルーシャンがそう問いかければ、ドロシーは「はい!」と言い満面の笑みを浮かべ、様々な調合の道具を見せてくれる。その道具は見たことがない専門的なものから、王城でたまに見るものなど様々だ。ルーシャンはドロシーの専門的な話も興味深そうに聞いてくれる。そのため、ドロシーの口はしばらくの間止まらなかった。

「では、次にポーションを実際に作ってみますね」
「分かった」

 ドロシーはそう声をかけ、ルーシャンの返事を聞くとルビー草とウェットン草をタッパーから取り出し、一旦すり鉢に入れる。そして、その二つの薬草をすりつぶしていく。その手つきはとても慣れており、ルーシャンは感心してしまった。その手際の良さは、趣味の範疇を超えているどころかプロ以上の実力を兼ね備えているようだ。……まぁ、ドロシーは正真正銘これで商売をしているプロなのだが。

「薬草は、全部すりつぶしちゃうの?」
「まぁ、大体は。私のポーションは見た目よりも効力優先なので」

 薬草を手際よくすりつぶしながら、ドロシーはそう答える。その視線は常にすり鉢の方であり、ルーシャンに向けられることはない。しかし、その真剣なまなざしはとても魅力的だった。だからだろうか、ルーシャンは柄にもなく「綺麗だなぁ」なんて思ってしまう。元より、何かに真剣に打ち込んでいる人間は、まだ「好き」と言える部類なのだ。

「次にこのすりつぶした薬草を、タッパーに移します。そのタッパーに水を入れます」
「……ここでも、タッパーなんだ」
「まぁ、使いやすいですから」

 見た目を考えるのならば、もっときれいな深皿でも用意するべきだっただろうか。そうドロシーは思ったが、やはりこのまま保存できる点でタッパーは有能なのだ。もう、神のアイテムだとドロシーは思っていた。さながら、崇拝者である。
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