【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「ルーシャン殿下、どうぞ」

 その後、ダニエルは納得してくれたのかルーシャンにタッパーを手渡してくる。そのタッパーに入ったポーションに指を付けてみれば、そこにあった古傷が癒えていくのを実感する。ポーションは傷を治し、魔力を補充したりするものだ。まぁ、今回は傷を癒すのが目的のものなのだろうが。

「ドロシー嬢は、こういうことを毎日しているの?」
「依頼があれば、それに応じたものを作ります。依頼がいない場合は、自分が作りたいものを作ります」
「……調合バカ?」
「まぁ、そう言うことになりますかね」

 ルーシャンの言葉に、ドロシーはクスっと笑いながらそう返す。普通の令嬢ならば「バカ」と呼ばれればきっと怒り出すだろう。だが、ドロシーからすれば「調合バカ」という言葉は褒め言葉の一種である。なんといっても、自分でも自分のことを「調合バカ」だと思っているからだ。

「こういうことをしていると、『魔女』とか呼ばれない?」
「……姿は隠してやっているので、そう呼ばれたことはありません。そもそも、私が『魔女』とか呼ばれる場合、大方『美貌の魔女』とか呼ばれるのでしょうね」
「自分の容姿に自信があるんだ」
「それは、ルーシャン殿下だってそうでしょう?」
「まぁね」

 そんな風にドロシーとルーシャンは会話をし、どちらともなく笑い合う。それに、ダニエルはホッと一息をついていた。ルーシャンは大の女性嫌いである。そんなルーシャンがほかでもないドロシーに心を許せるのならば。それ以上に良いことはない。なんといっても、ドロシーはルーシャンの一応とはいえ、妻なのだから。

「そう言えば、今度フォード伯爵家で当主の誕生日パーティーがあるんだってね」

 だが、ルーシャンのそんな言葉でドロシーは固まってしまった。何故、それをルーシャンが知っているのだろうか。そんなことを、思ってしまったのだ。
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