【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
16.「よし、決めた。ドロシー嬢、俺と一緒に参加しよう」
「……どうして、ルーシャン殿下がそのことを……」
「うん? ドロシー嬢もおかしなことを言うね。フォード伯爵家は辺境伯爵家だから、その地位は公爵家の次に高い。そんな家の当主の誕生日パーティーに、王家が招待されないわけがないよ」

 ルーシャンは何でもない風にドロシーにそう説明をしてくれる。確かに、フォード伯爵家の地位である辺境伯は公爵の次、もしくはそれに並ぶくらいの権力を持つ爵位だ。王族からの信頼も厚く、多数の武力を持つ。それが辺境伯爵家というのは一般常識だ。そのため、ルーシャンが言うことはもっともなのだ。……問題が、ジュリアナがすでにルーシャンを招待していることを教えてくれなかったこと、だろうか。

「ドロシー嬢は、フォード伯爵家の一人娘のジュリアナ嬢と親しいんだよね? 招待されているんじゃないの?」
「……まぁ、そうですわね」

 そう言いながら、ドロシーは「……参加、されますの?」とルーシャンに問いかけていた。きっと、ルーシャンのことだ、参加はしないだろう。引きこもりのひねくれ王子が、そう簡単に参加するとは到底思えない。そう、ドロシーは思っていた。

「……迷っている感じ、かな。そろそろ社交界にも復帰しないと、父上がうるさいしね」

 だが、ルーシャンの回答は意外なものだった。だからこそ、ドロシーは驚き「そう、ですの」としか返せなかった。確かに、ルーシャンは正真正銘一国の王子である。そんな彼がいつまでも引きこもれるわけがない。さらに言えば、ルーシャンは一応とはいえ既婚者になったのだ。今までのようなわがままは到底通用しなくなっただろう。

「ドロシー嬢は、どうするの?」
「出来れば参加したい……と思っております。せっかくジュリアナ様が招待してくださっているのですもの。断るのも無礼、かと」

 そう言いながら、ドロシーは調合の道具を片付けていく。薬草の入ったタッパーも元の場所に戻し、手を忙しなく動かす。そして、それと同時に脳も忙しなく動いていた。……このままだと、まさかだがルーシャンと一緒に社交界に出る羽目に陥るのではないだろうか。ドロシーの容姿は絶世の美少女である。……女避けには最適な逸材だろう。それに、ルーシャンの一応の妻である。ルーシャンにとってこれ以上に良いパートナーは、いない。
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