【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
17.「……初耳だわ」
「はぁ、疲れたわ……」

 ルーシャンが帰った後、ドロシーはその場にまた崩れ落ちた。そして、酷い後悔が脳内をよぎる。何故、自分はあの説得に折れてしまったのだろうか。ただでさえ引きこもりなのに、隣に美貌のひねくれ王子を連れてパーティーに参加など、心労で死にそうだ。そう思って、頭を抱えてしまう。

「お嬢様、お疲れ様でした」

 そんなドロシーの様子を見かねてか、リリーが声をかけてくれる。その後「部屋に戻って、お茶を飲みましょう」と言ってくれた。その気遣いがとてもありがたく、ドロシーは「そうね」と言って立ち直る。それに、本日のお茶菓子は何だろうか。そう思えば、まだ心が軽くなる。

「フォード伯爵の誕生日パーティーは、来週でしたね。明日、デザイナーの方がやってこられて、パーティー用のドレスを仕立てるそうですよ」
「……待ってくれる? 誰がデザイナーなんて呼んだのかしら?」
「旦那様でございます。せっかくなので、お嬢様に新しいドレスをプレゼント……ということで」
「……はぁ」

 リリーの言葉を聞いて、ドロシーは露骨にため息をつく。ドロシーはドレスなど滅多なことでは着ない。なんといっても、引きこもりなのだ。ドレスを着る機会など滅多なことではありゃしない。そもそも、家では動きやすいワンピースを愛用している。……まぁ、ここ三ヶ月ほど毎日のようにドレスを身に纏い、王城に通い詰めていたのだが。
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