【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
 ドロシーは引きこもりがちな令嬢である。だが、決して怠惰に過ごしているわけではない。ドロシーは大好きな調合を行い、風邪薬や傷薬をはじめとしたポーションを作っているのだ。ポーションとは、薬草などを組み合わせ魔法をかけて作り上げる、いわば液体の薬。種類は日常生活で使うものから、冒険者が持ち歩く魔力回復のものまで千差万別。ドロシーは幼少期から調合の仕事に興味があり、その結果ポーション作りに見事に嵌った。今では多数のお得意様まで抱える人気の調合師だ。……まぁ、高位貴族の令嬢が商売などを普通はしないため、正体を隠し遠縁の親戚に売ってもらっているのだが。

「そもそも、お嬢様は引きこもりではありませんか。そんな毎日太陽の光を浴びて……健康的になられてしまって……!」
「それ、喜んでいるじゃない」
「まぁ、そうですね」

 リリーとそんな会話を交わしながら、ドロシーは依頼を受けて作ったポーションの数を確認する。ドロシーにとってポーション作りとはいわば生きがいそのもの。そのため、依頼を受ければ自らが持つ知識と実力のすべてを使い、しっかりと作り上げる。つまり、ドロシーにとってルーシャンのことよりも仕事の方が大切だった。

(そもそも、ルーシャン殿下との婚約のお話を引き受けたのも、彼が引きこもりだったからなのよね……)

 きっと、婚姻をすれば夫となる人がドロシーの商売など許すわけがない。しかし、引きこもりで外の世界に疎いルーシャンならば、きっと言いくるめられるはず。そういう企みがあり、ドロシーはルーシャンとの婚約話を十二歳のころに受けた。……だが、まさかここまで引きこもりをこじらせているとは思いもしなかったのだ。
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