【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「普通の令嬢は調合になんて興味は持たない。普通にタッパーなんて触らない。薬草なんて保管しない」
「そうですけれど……人がオブラートに包んでいったことを、直球に直さないでください」
「嫌だ。俺はひねくれ王子だから、こういうのは当然でしょ?」
「こんな時はひねくれ王子の呼び名を利用するのですね」

 ルーシャンの言葉を聞いて、ダニエルは露骨にため息をついた。本当に、この主は。ダニエルは忠誠心は強いものの、ルーシャンの行動には心底呆れている部分がある。それでも面倒を見て、側にいるのは……ただ単に、恩があるから。

「そういえば、ダニエルってこの季節に俺の従者になったよね」
「そうでございましたね。三年ほど前、でしたっけ?」
「そうそう。もっと俺に感謝してくれてもいいんだよ?」
「感謝していますよ。ですが、これ以上感謝をしますと殿下が調子に乗られますので、言葉に出すのは嫌ですよ」
「そっか」

 ダニエルのあっさりとした言葉は、間違いなく正しい。ルーシャンはダニエルの前限定で、少し子供っぽくなる。だから、調子に乗ってしまう。それはきっと――ルーシャンが、誰よりもダニエルのことを信頼しているから、だろう。
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