【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか？～拗らせ男女の（離縁前提）夫婦生活～ 第一部【コミカライズ原作】

「ドロシー様。来てくださったのですね！」
「……えぇ、まぁ」

　少し複雑な気分になりながらも、ドロシーはジュリアナに対して笑みを向けた。彼女がルーシャンをすでに招待していると教えてくれれば、あんな風に思い悩む必要などなかったのに。そう思うが、ジュリアナには悪気はないのだろう。なんと言っても、彼女はドロシーが誰よりも大好きだから。

「フォード伯爵。本日はお誕生日おめでとうございます」

　ドロシーはそんなジュリアナからフォード伯爵に視線を移し、綺麗な一礼を披露した。そうすれば、周りの視線がすぐにドロシーに集まる。「美女だ」「女神だ」という男性陣の声から、「あんなの、反則です」という女性の声まで。ほとんどの人間はドロシーの美貌に圧倒されているか、酔いしれているようだ。しかし、ドロシーはにっこりとした笑みをフォード伯爵とジュリアナにのみ向けていた。

「俺からも。本日はお誕生日おめでとうございます」

　その後、ドロシーに続くようにルーシャンが笑みを浮かべてそう言えば、今度は近くにいた人間から感嘆のため息が漏れる。きっと、それだけルーシャンの笑みが魅力的だということだろう。中身を知らない人からすれば、この二人は極上の容姿なのだ。

「ルーシャン殿下、ドロシー嬢。ありがとうございます。特に、ドロシー嬢はジュリアナととても親しくしてくださっているようで……」

　対するフォード伯爵は、そんなことを言うと深く一礼をする。その相手はルーシャンであり、ドロシーだ。普通ならば、ルーシャンはともかくドロシーにそこまで深々と一礼をする必要はない。だが、フォード伯爵からすれば愛娘が一番親しくしている友人なのだ。深々と一礼をしても構わない、という気持ちがあった。