【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
(挙式の件に関してはちょっぴりショックだったけれど、ここまで尾を引いて怒るものでもないのよね……。けど、殴り込みにかなくちゃ薄情な妻だとか思われちゃいそうだし……)

 そして、ドロシーの本当の考えはこれだった。確かに、ウエディングドレスを身にまとうことが出来なかったのは、少々ショックだった。しかし、ここまで尾を引いて怒ることでもない。そう、ドロシーは思っていた。ただ怒り続ける「フリ」をするのは、こうでもしないと「薄情な妻」やら「薄情な令嬢」などというレッテルを張られそうだったからだ。小さなレッテルでも、いつ大きくなり膨れ上がるかはわからない。怪しい芽は小さいうちに積んでおくのがベストなのだ。

「さぁ、商品を納品したら本日もルーシャン殿下に会いに行きましょうか。どうせ追っ払われますが、それでも薄情な妻と思われるよりはずっとマシだもの」
「……お嬢様のそういうちゃっかりとしたところ、私は好きですよ」
「あら、褒めても何も出ないわよ」

 リリーとそんな風に笑いあい、ドロシーは従者にポーションが詰められた箱を持ってもらう。両親はドロシーがルーシャンに蔑ろにされていることに対して、怒ってはいるが表には出さない。それは、ドロシーの気持ちを優先しているから。ドロシーが怒っていないのに自分たちが怒るのは筋違いとでも思っているのだろう。

(気が重いけれど、本日も参りましょうか)

 それだけを心の中で呟いて、ドロシーはゆっくりとハートフィールド侯爵家の屋敷を歩く。その歩き方はとても優雅であり美しく、周囲の使用人たちは感嘆のため息を零すのだった。
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