【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
21.「……ですが」
「あのですね、私、ドロシー様とたくさんお話したいことがありましたの。……ですが、張り切りすぎて忘れてしまって……」
「まぁ、そうなのですね。お手紙にでも、書いてくださればよかったのに」
「実際にお会いしてお話するのと、手紙にしたためるのとでは訳が違います!」
ジュリアナに手を引かれ、ドロシーが連れてこられたのはまだ人の少ない場所だった。その後、ジュリアナは嬉しそうにドロシーに話しかけてくる。その様子は、まるで妹が姉に構ってほしいというような姿で。少し微笑ましい気持ちになるものの、ドロシーからすればジュリアナの行動は咎めなければならない。
「ジュリアナ様。ここは社交の場でございますよ。もう少し、落ち着いてくださいませ」
そのため、ドロシーはジュリアナにそう言い聞かせる。そうすれば、ジュリアナは眉をさげて「はーい」と返事をしてくれた。ジュリアナは素直でまっすぐな性格だ。そのため、こういう風に優しく注意をすればまだ聞いてくれる。……それが、ドロシーや両親に対して限定のことだと、ドロシーは知らない。知る由もない。
「ところで、意外でしたわ。ドロシー様がルーシャン殿下と共に参加してくださるなんて……」
「そうね。私も意外だったわ。でも、ジュリアナ様がルーシャン殿下をお誘いしたのでしょう?」
ゆっくりとドロシーがジュリアナにそう問いかければ、ジュリアナは「……お父様です、お誘いしたのは」と少しだけ頬を膨らませて言った。その仕草はとても可愛らしく、ドロシーは微笑ましくなりながらジュリアナの頭を軽く撫でてしまう。そうすれば、ジュリアナは目を細めて嬉しそうに笑った。
「……本当のところ、私はルーシャン殿下が嫌いです。……だって、ドロシー様を蔑ろにするのですから」
「ふふっ、そうなのね。ですが、そういうことを大々的に言ってはダメよ。……不敬罪に、問われてしまうもの」
実際、ルーシャンはそれくらいで不敬罪に問うことはないだろう。それは、ドロシーにだって分かる。しかし、貴族とは足の引っ張り合いをする生き物である。何かがあって、ジュリアナに被害が及ぶのはドロシーとしても避けたいことだった。フォード伯爵家は辺境伯爵家であり、かなりの権力を持つが、それでも弱みは見せないに限る。
「まぁ、そうなのですね。お手紙にでも、書いてくださればよかったのに」
「実際にお会いしてお話するのと、手紙にしたためるのとでは訳が違います!」
ジュリアナに手を引かれ、ドロシーが連れてこられたのはまだ人の少ない場所だった。その後、ジュリアナは嬉しそうにドロシーに話しかけてくる。その様子は、まるで妹が姉に構ってほしいというような姿で。少し微笑ましい気持ちになるものの、ドロシーからすればジュリアナの行動は咎めなければならない。
「ジュリアナ様。ここは社交の場でございますよ。もう少し、落ち着いてくださいませ」
そのため、ドロシーはジュリアナにそう言い聞かせる。そうすれば、ジュリアナは眉をさげて「はーい」と返事をしてくれた。ジュリアナは素直でまっすぐな性格だ。そのため、こういう風に優しく注意をすればまだ聞いてくれる。……それが、ドロシーや両親に対して限定のことだと、ドロシーは知らない。知る由もない。
「ところで、意外でしたわ。ドロシー様がルーシャン殿下と共に参加してくださるなんて……」
「そうね。私も意外だったわ。でも、ジュリアナ様がルーシャン殿下をお誘いしたのでしょう?」
ゆっくりとドロシーがジュリアナにそう問いかければ、ジュリアナは「……お父様です、お誘いしたのは」と少しだけ頬を膨らませて言った。その仕草はとても可愛らしく、ドロシーは微笑ましくなりながらジュリアナの頭を軽く撫でてしまう。そうすれば、ジュリアナは目を細めて嬉しそうに笑った。
「……本当のところ、私はルーシャン殿下が嫌いです。……だって、ドロシー様を蔑ろにするのですから」
「ふふっ、そうなのね。ですが、そういうことを大々的に言ってはダメよ。……不敬罪に、問われてしまうもの」
実際、ルーシャンはそれくらいで不敬罪に問うことはないだろう。それは、ドロシーにだって分かる。しかし、貴族とは足の引っ張り合いをする生き物である。何かがあって、ジュリアナに被害が及ぶのはドロシーとしても避けたいことだった。フォード伯爵家は辺境伯爵家であり、かなりの権力を持つが、それでも弱みは見せないに限る。