【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
3.「気が変わった」
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「……あの女は、もう帰ったか?」
「はい、殿下」

 午後三時半頃。ネイピア王国の王城の一室にて、一人の青年がソファーから思い腰を上げた。そして、その茶色のふわふわとした髪の毛を書き上げながら、紫色のおっとりとして見える形の目で目の前の専属従者を見据える。青年のその顔立ちはとても整っており、彫刻にさえも見えてしまう。そんな主を見据え、従者ダニエルは「……本当に、このままでよろしいのですか?」などと余計なお世話だとわかっていながらも、尋ねていた。

「良いよ。あちらとしても、世間体を考えてこちらに来ているだけのようだし。本当は俺に会いたいなんて思っちゃいない。相手も、相当な拗らせ女みたいだし」
「……お言葉ですが、殿下にそう言われたら終わりかと」
「知っているよ。だが、あちらも同等だろう?」

 そう言いながら、このネイピア王国の第二王子ルーシャンは、ダニエルに好戦的な笑みを向けた。

 王城の従者たちが言っていた「第二王子殿下は寝込んでいる」というのは真っ赤な嘘である。ただ単に、ルーシャンが妻であるドロシーに会いたくないからそう言えと指示を出しているだけ。いずれは飽きてこなくなるとにらんでいたが、ここのところ三か月の間一日も休まずに来ているため、相手も相当世間体を気にしているようだ。……ただ単に、ルーシャンに会いたいだけならば三か月も通い詰めてこないはず。……まさか、一言文句を言いたいがためだけに通い詰めているという意味も含まれていることなど、ルーシャンでも予想できていないが。

 ルーシャンはひねくれ者の王子であり、女性嫌いを拗らせた王子でもある。幼少期からその整った容姿に魅了されてきた女性は数知れず。誘拐されそうになったことさえ、あったのだ。そのため、ルーシャンからすれば女性など愛を与えるに値しない存在だった。そういうこともあり、ルーシャンの身の回りの世話はこの専属従者ダニエルがすべて行う。従者は度々部屋に入れるが、女性は一貫して入れないと決めていた。
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