【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】

「じゃあ、ご自由にどうぞ。……ただし、本は汚さないでくださいませ」
「分かっている」

 ドロシーのその言葉を聞いて、ルーシャンは棚の方に移動していく。この部屋には棚のスペースと本を読みながらお茶が出来る休憩スペースの二つで成り立っている。ドロシーは怠惰だ。そのため、わざわざ本を私室に持っていくのが面倒だということから、この休憩スペースが出来た。ちなみに、両親はドロシーに大層甘いので、反対するようなことはない。

「それにしても、いろいろと面白そうな本がたくさんあるよね」
「……まぁ、お父様に仕入れていただくので」

 ハートフィールド侯爵家は代々他国との交流も盛んに行っていた。そのためだろうか、他国への伝手も多く、他国の珍しいものもたくさん手に入るのだ。父は度々他国の商人を呼び寄せており、その際にドロシーは興味深い本なども仕入れるようにお願いしていた。ドロシーに甘々な両親はそれを断ることはしない。

「そういえば、ハートフィールド侯爵家は代々他国との交流も盛んに行っていたっけ」
「そうです。……しかし、よくご存じですね」
「まぁ、婿入りする予定だったから、いろいろと学んだからね」

 ルーシャンは一冊の本を取り出し、ぺらぺらとめくりながらそう言う。それに、ドロシーは納得した。確かに、ルーシャンは婿入り予定だった。そして、ドロシーと婚姻しこのハートフィールド侯爵家の次期当主の座に収まるはずだったのだ。……まぁ、婚姻して四ヶ月以上経つが、そんなことになる予兆はちっともない。
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