【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】

「……ルーシャン殿下は、私との離縁後は何をしますの?」

 ふと気になったので、ドロシーは棚の方に移動しながらルーシャンにそう問いかけてみた。すると、彼は「……王子として、適当に過ごそうかなぁって」とボソッと零す。ただ、その表情は何処か暗い。何かあったのかもしれない。そう思うが、ドロシーがルーシャンに深入りする義理はこれっぽっちもない。そのため、ドロシーは「気楽でいいですわね」と言って一冊の本を手に取る。

「……気楽って言うほど、気楽でもないけれどさ」

 それだけを言ったルーシャンは、「はぁ」とため息をつく。一体、何がそこまで彼の気持ちを落ち込ませるのだろうか。そんなことを思いながら、ドロシーは一冊の本を持って休憩スペースに戻る。そうすれば、ルーシャンも読む本を選び終えたのか休憩スペースに戻ってきた。

「どうぞ、お茶でございます」

 二人が戻ってきたのを見計らってか、リリーが二人分のお茶をテーブルの上に置いてくれる。それに視線だけで礼を告げ、ドロシーは手に持つ本をぺらぺらと捲る。……やはり、調合の本は大層面白い。そう、思えた。

「あのさ、ドロシー嬢」
「どうなさいました?」

 ルーシャンが声をかけてくるので、ドロシーは本から視線を上げることなくそう返事をする。普通ならば不敬に問われそうなものだが、これでもドロシーは一応ルーシャンの妻である。不敬に問われることはない。……本当に「一応」の妻なのだが。

「……一つだけ、相談があってさ」

 ぱたんと本が閉じられる音が、ドロシーの耳に届く。だからこそ、ドロシーは怪訝に思いながらも顔を上げた。そうすれば、そこではルーシャンが真剣な表情でドロシーのことをまっすぐに見据えていた。
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