【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「挙句、ドロシー嬢との関係が上手く行っていないんだったら、自分なんてどうだ? って売り込んでくる」
ぺらりと本を捲る音と、ルーシャンの続けられる言葉。それから、ドロシーの相槌だけが部屋を支配する。ドロシーは適当に相槌を打っているように聞こえるが、実際はかなり考えていた。
(ルーシャン殿下との関係が上手く行っていないこと、他者にもバレていたのね)
主に、そういうことを。ついでに言うのならば、エイリーンはかなり図々しくちゃっかりとした人間らしい。普通、自分を堂々と売り込むことなんて出来ないだろう。もしかしたらだが、それほどまでにルーシャンの妻の座に収まりたいのかもしれない。少なくとも、ドロシーにはない気持ちだ。
「それで、どうなさいましたの?」
特に興味もないようにそう返事をすれば、ルーシャンは「追い返した」と淡々と答える。
「正直、俺、ああいうタイプ好きじゃないし。公爵令嬢だから大々的に蔑ろには出来ないけれど、一応俺妻帯者だし。妻帯者に言い寄る方が、悪いし」
「まぁ、そんな時だけ私のことを利用するのですね」
「……お互い様」
確かに、ドロシーもルーシャンを利用したことはある。だから、ルーシャンの言うことは間違いない。そのため、これ以上は言えない。まぁ、元々からかう意味合いでそう言っているので、本気ではないのだが。それもルーシャンにも伝わっているはずである。