【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
27.「どうしたら……って、それを私に訊きます?」
「……しかしまぁ、ルーシャン殿下に言い寄るご令嬢がいたのですね」

 本を閉じながら、ドロシーはそう言葉を返す。ドロシーは自分の容姿に絶対的な自信がある。そういうこともあり、堂々とルーシャンに言い寄る女性はいないだろうと思っていた。しかし、どうやらそれは思い込みだったらしい。

(でもまぁ、別にどうでもいいですけれど)

 そう思いながら、ドロシーはお茶の入ったカップに口を付ける。その後「……それで、ルーシャン殿下は私にそれを伝えて何が目的ですか?」とにっこりと笑って問いかけてみる。

 ルーシャンはこう見えて容量が良い。そのため、無駄なことは言わない主義だ。それはほんの一ヶ月ほど前から関わり始めたドロシーにも、分かること。

「……いや、特に意味はないけれどさ。……どうしたらいいかなぁって、思ってさ」

 ドロシーを見つめながら、ルーシャンは少し言いにくそうにそう言葉を告げた。そして、彼もお茶の入ったカップに口をつける。その仕草はとても美しく、ドロシーは「さすが王子様」なんて他人事のように思っていた。

 しかし、それよりも。

「どうしたら……って、それを私に訊きます?」

 これでもドロシーはルーシャンの妻である。そんなドロシーに「別の女性に言い寄られている」なんて言うのはいかがなものか。そんな意味を込めてドロシーが眉間にしわを寄せながら言えば、ルーシャンは「だって、ドロシー嬢にしか言えないし」とあっけらかんと言う。

「それに、俺たち愛し合う夫婦じゃないし。だから、別に困らないよね?」

 その言葉に、ドロシーは「……まぁ」と返事をした。実際、自分たちは愛し合うような関係ではない。この関係は政略的なものであり、離縁前提のものだ。だから、文句をどうこう言うつもりはない。
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