【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
「さて、俺はそろそろ散歩にでも行くか。一週間ぶりの外だし。……面白いことなどないけれど、身体が鈍るのはよくないからさ」
「……さようでございますか」
ダニエルはルーシャンの言葉にそれだけを返し、部屋を出る支度を始めたルーシャンを手伝う。いつものように王子とは思えないほど質素な装いと、目深にかぶったフード。この王城で雇っている魔術師は大体目深にフードをかぶっていることから、不審者とは思われない。それが、せめてもの救いだろうか。
「じゃあ、ダニエルはいつも通り遠くからついてきて」
「はい」
目深にかぶったフードと、ローブを身にまとった姿はいかにもな魔術師だろう。特に、一人で行動していると周囲はルーシャンのことを「お抱えの魔術師」だと思っているようだ。そんなルーシャンの後をついて歩きながら、ダニエルはこっそりとため息をつく。
(殿下も、そんなに女性が嫌いならば婚姻などしなければよかったのに)
心の奥底でそう思うが、王子たるもの妻を迎えなくてはいけないと言われていることはダニエルだって知っている。王子はいずれ他国の王女、もしくは自国の有力貴族と婚姻を結ぶのが、この国の常だからだ。ルーシャンの妻となったドロシーも、例にもれず名門侯爵家の生まれという生粋の有力貴族の娘。その容姿をダニエルも遠めから見たことがあるが、ルーシャンと並んでも劣らないほどの美形だった。……そして、何よりもその目には強い意志が宿っていた。
(あの意志の強さ。普通の女性じゃないな)
そんなことを思いながら、ダニエルは十メートルほど離れてルーシャンの後を追う。ルーシャンはいつものようにのんびりとゆっくりとしたペースで歩いている。元よりせっかちな部分があり、無意識のうちに早足で歩いてしまうダニエルからすれば、ペース配分がとても難しい。だが、これも仕事。そう自分に言い聞かせた。
「……さようでございますか」
ダニエルはルーシャンの言葉にそれだけを返し、部屋を出る支度を始めたルーシャンを手伝う。いつものように王子とは思えないほど質素な装いと、目深にかぶったフード。この王城で雇っている魔術師は大体目深にフードをかぶっていることから、不審者とは思われない。それが、せめてもの救いだろうか。
「じゃあ、ダニエルはいつも通り遠くからついてきて」
「はい」
目深にかぶったフードと、ローブを身にまとった姿はいかにもな魔術師だろう。特に、一人で行動していると周囲はルーシャンのことを「お抱えの魔術師」だと思っているようだ。そんなルーシャンの後をついて歩きながら、ダニエルはこっそりとため息をつく。
(殿下も、そんなに女性が嫌いならば婚姻などしなければよかったのに)
心の奥底でそう思うが、王子たるもの妻を迎えなくてはいけないと言われていることはダニエルだって知っている。王子はいずれ他国の王女、もしくは自国の有力貴族と婚姻を結ぶのが、この国の常だからだ。ルーシャンの妻となったドロシーも、例にもれず名門侯爵家の生まれという生粋の有力貴族の娘。その容姿をダニエルも遠めから見たことがあるが、ルーシャンと並んでも劣らないほどの美形だった。……そして、何よりもその目には強い意志が宿っていた。
(あの意志の強さ。普通の女性じゃないな)
そんなことを思いながら、ダニエルは十メートルほど離れてルーシャンの後を追う。ルーシャンはいつものようにのんびりとゆっくりとしたペースで歩いている。元よりせっかちな部分があり、無意識のうちに早足で歩いてしまうダニエルからすれば、ペース配分がとても難しい。だが、これも仕事。そう自分に言い聞かせた。