【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
29.「――言いたいことは、それだけか?」
それからしばらく歩くと、ルーシャン自身の部屋が見えてくる。それにルーシャンがホッと一息ついていれば、ふと前から一人の従者が走ってきた。彼はダニエルの補佐のような役割を務めている若い少年であり、ルーシャンは何かあったのかと顔をしかめる。すると、彼は「で、殿下!」と叫んでいた。
「……どうした」
「い、いえ、ブラックウェル公爵家のエイリーン様が、いらっしゃいまして……」
従者はルーシャンの何処か機嫌の悪そうな顔に怯んでか、恐る恐るといった風にそう言ってくる。……今日も、エイリーンは来たのか。最近エイリーンは毎日のように王城に顔を見せている。公爵令嬢という身分のため、蔑ろに出来ないのが辛い。そう思いながら、ルーシャンは「追い返せ」と言って部屋に入ろうとする。
「で、ですが! 殿下に会えるまでここを動かないと、おっしゃっておりまして……!」
が、従者はそう言いながら部屋に入ろうとするルーシャンを止める。ダニエルに視線だけで指示を出せば、ダニエルは「……ご自分で、解決してくださいませ」と言うだけだ。
「殿下がしっかりとエイリーン様を拒絶しなかったので、招いた事態でしょう。ご自分で、何とかしてください」
ダニエルは目を瞑ってそう言う。それに内心で舌打ちしながら、ルーシャンは「エイリーン嬢は、何処にいる」と従者に声をかける。そうすれば、従者は「王城の、入口でございます」と一礼をして告げてきた。ルーシャンはいつも裏口から出入りするので、鉢合わせなかっただけらしい。
(……ドロシー嬢の時も鬱陶しかったけれど、今回はそれ以上だな)
心の中でそう呟きながら王城の入口に向かう。入口に近づけば近づくほど、騒がしい声が聞こえてきた。その声は甲高い女性のものであり、尚更ルーシャンの機嫌を損ねる。この声を、ルーシャンはよく知っている。……ほかでもない、エイリーンのものだ。
「……どうした」
「い、いえ、ブラックウェル公爵家のエイリーン様が、いらっしゃいまして……」
従者はルーシャンの何処か機嫌の悪そうな顔に怯んでか、恐る恐るといった風にそう言ってくる。……今日も、エイリーンは来たのか。最近エイリーンは毎日のように王城に顔を見せている。公爵令嬢という身分のため、蔑ろに出来ないのが辛い。そう思いながら、ルーシャンは「追い返せ」と言って部屋に入ろうとする。
「で、ですが! 殿下に会えるまでここを動かないと、おっしゃっておりまして……!」
が、従者はそう言いながら部屋に入ろうとするルーシャンを止める。ダニエルに視線だけで指示を出せば、ダニエルは「……ご自分で、解決してくださいませ」と言うだけだ。
「殿下がしっかりとエイリーン様を拒絶しなかったので、招いた事態でしょう。ご自分で、何とかしてください」
ダニエルは目を瞑ってそう言う。それに内心で舌打ちしながら、ルーシャンは「エイリーン嬢は、何処にいる」と従者に声をかける。そうすれば、従者は「王城の、入口でございます」と一礼をして告げてきた。ルーシャンはいつも裏口から出入りするので、鉢合わせなかっただけらしい。
(……ドロシー嬢の時も鬱陶しかったけれど、今回はそれ以上だな)
心の中でそう呟きながら王城の入口に向かう。入口に近づけば近づくほど、騒がしい声が聞こえてきた。その声は甲高い女性のものであり、尚更ルーシャンの機嫌を損ねる。この声を、ルーシャンはよく知っている。……ほかでもない、エイリーンのものだ。