【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか？～拗らせ男女の（離縁前提）夫婦生活～ 第一部【コミカライズ原作】

「それに、わたくしの方がルーシャン殿下をお慕いしております！」

　確かに、それはそうかもしれないな。ドロシーは、ルーシャンのことなどこれっぽっちも慕っていない。だが、そう思うと何故か胸が痛んだような気がした。その意味は、分からない。

「……あ、あと！　わたくし聖女見習いですもの。ルーシャン殿下の妻に相応しいですわ」

　聖女ならばまだしも、見習い程度で威張らないでほしい。内心でそうツッコむものの、もうそろそろ我慢の限界だった。エイリーンはルーシャンにさりげなく触れようとするが、それだけは全力で拒否しておいた。大して親しくもない女性に触れられるなど、虫唾が走る。……いや、親しかったとしても同じかもしれない。

「ですから！　是非ともわたくしと――」
「――言いたいことは、それだけか？」

　自分でも驚くほど、低い声が出た。今まで女性のことを嫌いだ嫌いだと思ってきたが、ここまでの拒絶反応を示すことはなかったのに。なのに、どうやらエイリーンは悪い意味で特別らしい。

「俺はエイリーン嬢と婚姻するつもりはない」

　だから、これで泣かれたとしても不可抗力だ。泣いたら泣いた面倒だが、このまま彼女の売り込みを聞いていても時間の無駄。そう、判断した。それに、いつまでもエイリーンと攻防戦をしている時間はないのだ。自分には、やりたいことがあるのだから。

「……ど、どうしてですの!?」

　ルーシャンの言葉を聞いて、エイリーンは大声を上げて詰め寄ってくる。その目には涙が潤んでおり、「やっぱり、泣くか」とルーシャンは心の中だけで悪態をついた。