【完結】殿下、離縁前提の結婚生活、いかがですか?~拗らせ男女の(離縁前提)夫婦生活~ 第一部【コミカライズ原作】
31.「……ルーシャン。お前、珍しいな」
 その日、ルーシャンは珍しく父に呼び出されていた。現国王である父は気まぐれな部分が強く、ふらっとどこかに行ってしまう。その結果、ルーシャンたち王子もあまり深く関わることがなかった。かといって、父は家族を愛していないわけではない。父として、教えてくれたことは現在とても役に立っている。

「しかし……陛下は一体何の御用なのでしょうか?」

 ルーシャンの後ろに控えていたダニエルが、不意にそう声をかけてくる。それに対し、ルーシャンは「……さぁね」と素っ気なく言葉を返した。父は気まぐれだ。しかし、つまらない用件でわざわざ自分を呼び出すとは考えにくい。きっと、何か重要な案件なのだろう。それが分かるからこそ、ルーシャンはぐっと手を握りしめた。……なんとなくだが、嫌な予感がする。

「父上、ルーシャンです」

 扉越しにそう声をかければ、中から父の「入れ」という声が聞こえてきた。それに合わせ部屋の扉を開けば、部屋の中には兄である第一王子パーシヴァル、それから弟である第三王子アルバートもいた。彼らもどうして呼び出されたのかが分かっていないらしく、頭上に疑問符を浮かべているようで。

「……全員、揃ったか」

 疑問符を浮かべる三人の王子に、父は「……面倒なことに、なってな」と言いながら髪の毛を掻く。その姿が何処となく印象的であり、ルーシャンは息を呑んだ。パーシヴァルはいつも通りのきりっとした表情をしている。アルバートの目は、何処となく不安そうに揺れていた。

「実は、王国を守る結界が、壊されたんだ」

 淡々とそう言う父だったが、その声音は何処となく迫力がある。その言葉を聞いて、ルーシャンは驚いてしまう。
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